「撃たれますよ」。アフリカ南部ジンバブエの大統領府前で写真を撮ろうとして、案内してくれた国際協力機構(JICA)の職員に止められた。自動小銃を手にした兵士が2人、警備についていた

 植民地支配の遺制ともいえる白人所有の大規模農場を接収し、黒人に分配するムガベ大統領の急進改革で農地は荒れ、ひどい物不足に見舞われていた。手をつけたはいいけれど、物や金が回らなくなったのである

 取材で訪れ15年がたつが、さほど好転してはいないらしい。一時は100兆もの単位のお札が必要になる極端なインフレで、経済は破綻し、回復の途上にある。そのジンバブエで、国軍による事実上のクーデターが起きた

 発端は、大統領の後継争いだとしても、背景には国民の不満がある。1980年の建国から37年。93歳。「独裁」「強権」といった冠のつくことの多いムガベ氏である。権力を譲ろうとした妻も、桁外れの浪費癖で評判だ

 しかし今も一部の根強い支持を集めている。白人政権を倒した「独立の英雄」だからだ。軍も荒っぽく排除するわけにはいかないようである

 退陣の流れは変わりそうにないが、新指導者と目される前副大統領は、住民2万人の虐殺事件への関与が疑われ「クロコダイル」の異名を持つと聞けば、たとえ一難去っても、と思わないでもない。