熊本城の、地震で崩れ落ちた石垣の石一つ一つに、元あった場所と位置が分かるよう番号が振ってある。H305―23とあれば「本丸の305面の23番目」のことだ。災害で破損した文化財は、できる限り元の通りの部材や工法で復旧するのが原則である
 
 昨年の熊本地震で、石垣の約10%、計8200平方メートルが崩落した。膨らみや緩みが出ている所も多い。1平方メートル当たり3、4個使われているというから、万単位の石を積み直さなければならない計算になる
 
 重要文化財13棟、復元20棟の建物が倒壊するなどした。城は年170万人が訪れる熊本きっての観光地である。地震が昼間だったら、多くの犠牲者が出ていた恐れがある
 
 熊本城総合事務所の古賀丈晴技術主幹が困惑気味に語る。「元に戻すといっても、同じような地震で、同じように崩れてもいいのか。地震は必ず来る。専門家を交えて補強や安全対策を検討しているが、なかなか結論が出ない」
 
 城は復興のシンボルでもある。ぐずぐずできない。幸いといっていいか、1960年再建の天守閣は鉄骨鉄筋コンクリート造り。むしろ耐震補強が必要な現代の建物だ。復旧は急ピッチで進んでおり、再来年度には姿を見せられるという
 
 城全体の修復には約20年を見込む。文化財の価値を守りつつ、気の遠くなるような作業が続く。