偉人には好かれる人と、そうでもない人がいる。吉田松陰や勝海舟といったそうそうたる面々が、こぞって教えを請うた第一級の人物にもかかわらず、世評はいまひとつの思想家佐久間象山などは、後者の典型だろう
 
 対して、坂本龍馬は好かれる偉人の代表格といえる。彼も象山門下の一人だった。京都近江屋で陸援隊隊長の中岡慎太郎と共に暗殺されて150年になるが、圧倒的な人気は師の地味さを補って余りある
 
 残された手紙の幾つかを、龍馬の故郷・高知で読んだ。殺伐とした幕末にあって、すっかり肩の力の抜けた、どこか飄然(ひょうぜん)とした書きぶりは、龍馬の人柄をよく表しているようだ
 
 「大事なことが書いてある。他人に<べちゃべちゃ>しゃべってはいけないよ」と、人を食った調子で始まる手紙(京都国立博物館蔵)は、姉の乙女に宛てた一通。今や国の重要文化財である。「日本の洗濯」と呼ばれる
 
 幕府の対外政策を嘆いてみせた後、悪い役人が大勢いるとし、さらにほえる。<日本を今一度せんたくいたし申候(もうしそうろう)>。ふと思う。龍馬がいたなら今の世の中、せんたくしたいか、そうでもないか
 
 高知観光を計画中なら、注意が一つ。県立坂本龍馬記念館は、改装工事で来春まで休館中。「日本の洗濯」(複製)は、隣の国民宿舎桂浜荘の特設コーナーでも見ることができる。