コインの表と裏。闘争心あふれる取り口が表だとすれば、短気は裏だったのかもしれない。それが災いしたのか、暴力に走り、土俵を追われる結果となった

 日馬富士関の現役引退は、土俵際にあった横綱の唯一の道なのだろう。ちまたには、厳しい声と惜しむ声が入り交じる。明らかなのは、もうあの取り口を見られないことである

 5年前に、使者として横綱昇進を伝達したのは、現在の日本相撲協会理事長の八角理事らだった。貴乃花理事の「体が一回り大きくなったが、体力の維持が必要になる。大型力士とやるときに、どんな相撲が取れるか考えてもらいたい」というコメントも本紙に残る

 それが、同じモンゴル出身の平幕貴ノ岩関に暴力を振るい、けがを負わせたことで、一気に暗転してしまった。出稽古でも巡業でも、将来が期待される若手に横綱が「稽古をつけてやる」のは、よくある。もっと強くなってほしい、との思いがこもる。激しいだけに、けがをすることもある

 日馬富士関は「若い力士の手本と見本になりたい」と口にしてきた。酒席でも、その手本を示したかったのだろうが、外に優しく、身内に厳しいという一面が出てしまったのか

 土俵の内と外。ともに求めているのは真相の解明に違いない。当然ながら、日馬富士関の引退という形で幕引きとはならない。