生後7カ月の長男を抱いて自席から動こうとしない女性市議、規則違反だからと幼子の退室を迫る議長たち。その画像に、胸を突かれた。もしも自分がその場にいたら、どうしただろうか

 熊本市議の緒方夕佳(おがたゆうか)さんが投じた一石が、波紋を広げている。42歳、2児の母。開会が遅れる結果になったことをわびながら「子育てとの両立に悩む多くの声を、見える形で表現したかった」と語った

 議会のルールに乳児同伴禁止はなかった。想定外の光景に、議長も戸惑う。「いきなり何だ、聞いてないぞ」と心で叫んだだろう。「議場を何と心得る」という加勢も聞こえそうだ。結局、「子どもは傍聴人」が退場の理屈になった

 議会って何だろう。乳幼児が泣けば、議事進行を妨げ集中力をそぐだろう。では、聞くに堪えないヤジや、子どもに見せられない乱闘騒ぎはどうなのか

 「場をわきまえろ」「特権的だ、甘えるな」という批判がある。議員の職場ってどこだろう。なり手不足、若者の関心低下に悩むのなら、市民の集まるスーパーの近くや広場に飛び出して、青空議会を開いてみてはどうだろう

 熊本市議会には1週間で480件の意見が寄せられ、賛否は3対2。鋭い問題提起になったのは間違いない。懸命に生きる人の暮らしと共にある。議員に求められるのは、その姿勢ではないか。