愚かさを装うすべを知っているのは賢いことだ、と古い格言にいう。もしかすると次なる妙案があるのかもしれない。だとしても、装う愚かさには程度があるだろう
 
 トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定し、テルアビブにある大使館を移転させるという。混乱必至の愚策である。燃え盛るたいまつを掲げて、火薬庫に飛び込むようなものではないか
 
 エルサレム神殿の跡地、キリストが処刑され、ムハンマドが天に昇ったとされる場所。エルサレムはユダヤ、キリスト、イスラムの3宗教の聖地である。「嘆きの壁」「聖墳墓教会」「岩のドーム」といえば、その姿が浮かぶ人も多かろう
 
 1967年の第3次中東戦争で占領・併合した東エルサレムを含め、イスラエルは全域を「不可分の永遠の首都」と主張する。いわば聖地の独り占めだ。追われたイスラム教徒が納得するはずがなく、国際社会も認めてはいない。日本も同様である
 
 米の歴代政権も、エルサレムの帰属はパレスチナと交渉で決めるべきだとしてきた。怖いのは、政策の大転換にもかかわらず、深謀遠慮があるように思えないことだ。今回の決定は、公約実現を支持者にアピールする狙いからだといわれる
 
 もはや、米国第一ですらない、「私」第一主義。世界を危機に陥れかねない愚行というほかない。