単なる物ではない。私たちの記憶を喚起し、生きる糧になるような存在。それを記念物という。文化庁主任文化財調査官・佐藤正知さんの持論である。地震津波碑としては初めて、国の登録記念物になった徳島県内の19基の認定作業に携わった

 自分たちが味わった苦労を碑に刻み、後代への戒めとした先人の思いをしっかり受け止め、教訓を生かしていくこと。それは取りも直さず、近い将来に必ず起きる南海トラフ巨大地震への備えとなる

 文化財登録を目指す地震津波碑は全国にあり、本県の記念碑の保存や活用の在り方は先例ともなる。海陽町で開かれた登録記念シンポジウムでは、案内板の不備などが指摘された。「全国初」に恥じないようにしなければ

 シンポでは中学生の発表もあった。全避難所を巡るオリエンテーリングなど、海陽中は日ごろから防災教育に熱心に取り組んでいるようである。それに引き換え、町の避難訓練への参加者は、東日本大震災から日がたつにつれて減っているとか

 企業の事業継続計画(BCP)に倣い、家庭には「FCP」が必要だ、と村上仁士徳島大名誉教授は言う。災害時にはどうするか、「家族継続計画」を練っておくことが大切だ

 昭和南海地震から71年。遠ざかるほどに、次の地震が近づく。地震津波碑は記す。「決して警戒を怠るな」。