あなた方も同罪だ、と言わんばかりの激しい口調に少々たじろいだ。韓国で元慰安婦の話を聞いた時のことである。別れ際、握手をした。差し出されたその手は柔らかく、温かかった
 
 戦時中の苦労や、日本への恨みつらみには記憶違いもあったが、慰安婦だったその一点に間違いはあるまい。ただ、彼女らには不本意だろうが、従軍慰安婦問題の広告塔としての役割を必死で演じているようにも見えた
 
 2年前、日韓合意が発表された際、存命していた元慰安婦47人中36人が、日本の政府予算を財源に、韓国の財団が支給した現金を受け取ったか、受け取る意思を示した。許すことはできないけれど、過去に区切りをつけたい。そんな人も多かったのだろうと想像した
 
 当事者の7割以上が合意やむなしとしているにもかかわらず、大きな声しか聞かない。つくづく韓国の世論は薄情だと思う。高齢の彼女らに、それほど時間は残されていないのに
 
 日韓合意の検証結果を受けて、文在寅(ムンジェイン)大統領は「この合意では問題が解決できない」と対策を指示した。常識的には国と国の約束を覆せるわけはないが、世論第一の国柄である
 
 元慰安婦は、かつて日本の戦争遂行の道具とされた。20世紀の終わりからは、韓国の政権浮揚に「利用」されている。どこまでも国家に翻弄(ほんろう)される元慰安婦が気の毒だ。