飲む前に、その名の由来に興味が湧いた。福島の知人から送られた銘酒「一生青春」。会津坂下(あいづばんげ)町の曙(あけぼの)酒造が20年前に製造を始めた。命名の経緯はこうだ
 
 1997年後半、外部委託の杜氏(とうじ)制をやめ、世に出したのがこの酒だ。自分たちだけで造った酒に再出発の意味を込めて<いくつになっていてもいつからでも青春の心を持ち、新しい挑戦をしていこう>と。合点がいった
 
 鈴木明美専務(59)が振り返る。99年から3年続けて全国新酒鑑評会で金賞を受賞したが、順風満帆とはいかなかった。会津産のヨーグルトと日本酒をブレンドしたリキュールの製造許可が下りた翌日に、東日本大震災と福島第1原発事故が襲った。蔵は2棟半壊した
 
 少女時代の思い出が詰まった酒蔵。貯蔵していた大小2千本が割れた。それでも、その苦難があったからこそ「蔵元同士の縦、横のつながりができて、自社だけでなく福島の酒を飲んでもらいたいという機運が生まれた」
 
 「一生青春」を出したのは40歳近くのことだ。「夢や志さえあれば、人はいくつからでも、いつからでもチャレンジできる。これからもずっと青春の蔵でありたい」と鈴木専務
 
 8日は成人の日。20歳の新成人は123万人に上るが、「青春」という言葉は若者だけのものではないのかもしれない。夢や志は老いることを知らない。