雪が降ったら、近くの寺社へ。冬の京都観光の鉄則である。普段とはまるで違う顔が見られる。雪に変わりはないじゃなし、県内が大雪に見舞われたきのう、本社近くの旧徳島城表御殿庭園(おもてごてんていえん)をのぞいた
 
 見頃には遅れた。それも仕方ない。いつもなら30分とかからない道が大渋滞。1時間半で到着した当方は恵まれた部類で、もう昼なのにまだ車中という同僚もいた。雪にはすこぶる弱い徳島である
 
 さて庭だ。安土桃山から江戸時代にかけて活躍した武将であり茶人、作庭にも秀でていた上田宗箇(うえだそうこ)が手掛けたと伝わる。阿波特産の青石を多く使い、地方色豊かに仕上げている
 
 いつ来ても感心するのが、枯れ山水に長々横たわる石橋である。初代藩主蜂須賀至鎮(よししげ)が踏み割ったとの伝説があり、なるほど、そこは雪もクレバスのように細く口を開いていた
 
 庭園の小さな足跡を追うと、その先で烏(からす)が2羽、雪を跳ねて遊んでいた。<ひごろにくき烏も雪の朝(あした)哉(かな)>は松尾芭蕉が滋賀滞在中に詠んだ句。いつもは憎らしく思う烏も、この日ばかりは。雪の朝は格別だ、と芭蕉さん。確かに風情はあるにせよ
 
 通勤通学、仕事が絡めばなお大変だ。渋滞の気の遠くなるような車列に思う。これだけの人が持ち場に就いて社会は回る。かけがえのない人の流れである。慣れぬ雪の日。いつにもまして慎重に。