中国唐代の詩人賈島(かとう)はよくよく考える人である。ある時、「僧は推す月下の門」の句が浮かんだ。だが迷う。ここは「おす」ではなく「たたく」か、いや「おす」か。苦しみ抜いた末、名高い文学者の韓愈(かんゆ)に問うと「敲(たた)くだね」。ようやく完成した
「推敲(すいこう)」の故事となった句は「李凝(りぎょう)の幽居(ゆうきょ)に題す」という作品の一部である。世俗から離れた暮らしを詠んだ詩で、風景の端には鳥がいる。はたと立ち止まる。渡り鳥か。ここ数日、「鳥」の字が読み流せない
香川県さぬき市の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザが確認され、約9万2千羽が殺処分された。鶏も気の毒だが、運営する徳島県内の食品会社が受けた打撃は大きかろう。「つらいです」。社員の嘆きは胸を打つけれど、安全第一の業界で報告が遅れたのは失態だ
鶏舎の窓は閉まっていて、感染した野鳥などが入った可能性は低いという。ならばどこから。関係機関には、しっかりと突き止めてもらいたい
徳島県内の養鶏農家全244戸の調査では、感染が疑われる鶏はいないようだ。それで安心とはいかないのが鳥インフルエンザである。防鳥ネットは万全か、人や車の消毒は十分か。専門家は基本対策の徹底を呼び掛ける
練って、また練って名詩が生まれる。防疫もまた、どこかに不備はないか、何度も「推敲」が必要だ。
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