刃を下向きにして腰につるすのが「太刀」。戦闘様式の変化で、室町時代の中ごろからは、刃を上向きにさやに収めて腰に差す「刀」が主流となった
 
 太刀と刀の違いは門外漢にもすぐに分かる。徳島城博物館で開催中の企画展「鐡華繚乱(てっかりょうらん) ものゝふの美」に出掛けて気づいた。太刀は刃を下にして、刀は上にして展示してある。どうやら、そういうものらしい
 
 入ってすぐの所にある太刀「銘 有綱」は国の重要文化財。平安時代後期というから千年の品だ。太刀「銘 一」は鎌倉時代初期から中期に栄えた福岡一文字派の手による。波のような不規則な刃文が力強い。同派の真価が十二分に発揮された「屈指の一口」という
 
 江戸時代を代表する刀工長曽祢虎徹(ながそねこてつ)の刀は、とにかく切れ味が鋭かったそうだ。試し切りで、重ねた4体の胴を裁断した「四ツ胴」が出品されている。68歳で試し役を務めた人物の名も刻む
 
 今回は数々の名工を生み「五箇伝」と称された備前(岡山)、美濃(岐阜)、相州(神奈川)、山城(京都)、大和(奈良)の日本刀が一度に見られるまたとない機会でもある
 
 大した知識もないのに目を奪われるのは、刀剣の持つ、視線を吸い込んでいくようなあやしい輝きにあるのだろう。ゆがんだ心は、斬って捨てられるかもしれない。何やらそんな気も。2月12日まで。