並大抵の苦労ではない。映画に描かれた戦中戦後を生き抜いた庶民の姿に、ふと記憶にない祖父が重なった。どこから来たのか、行く先々でどんなことがあったのか

 かなわないことなのに、そう聞きたくなったのは映画「いつまた、君と~何日君再来~」を見たからだ。俳優の向井理さんの祖母が書いた手記を基にした、人間ドラマである。当時大学生だった向井さんは、パソコンによる清書で協力したという

 向井さんがこう話している。「あんな時代でも諦めずに生き抜いてくれた人たちがいたから、今の僕らがいる。それは揺るぎのない事実。だからこそ『これは実話だ』と言えるものにしたかった」

 行く先々で立ち往生することの多い、喜びより悲しみが勝っていた時代を乗り越えてきた人がいて私がいる。「徳島でみれない映画を見る会」の30周年を記念し、上映した「いつまた―」はそう教える

 会は、県内で未公開の名画や傑作シネマを、会員制の上映会で紹介してきた。徳島で見られない作品は多い。自分たちの手で、もっと鑑賞の機会をつくろう。それが原点である

 一口に30年というが、始めるより続けることの方が大変だ。来月は第2次大戦末期にポーランドで起きた史実を基にした「夜明けの祈り」を上映する。たくさんの人生が詰まった映画を一人でも多くの人に。