犬なら番をする。でも、お前は一体、日がな一日、何をやっているのだ。面倒くさそうに顔を上げ、再び惰眠をむさぼる飼い猫の代わりに連れ合いが答えた。「かわいいのが仕事なのよ、ね」
 
 こんな気安い生き方があっていいのか。とはいえ、うちに迷い込み、居着くまでの数カ月、生きるか死ぬかの苦労あっての境遇か。猫はそういうものといったって、しかし、もう少しはかわいげがあってもいいんじゃない
 
 猫かわいがりという。好例が作家内田百閒(ひゃっけん)の随筆「ノラや」(中央公論新社)にある。出合いと突然の失踪。行方を案じ百鬼園先生、近所に聞こえるほど号泣したしなめられる毎日。すしが食べたくなっても、ノラの一番の好物がたまごだったと思い出してはまた涙
 
 ペットフード協会の調査では昨年、猫の推定飼育数が犬を上回ったそうである。家族の一員、老後の友としている読者も多かろう。ただ、猫かわいがりは要注意のようだ
 
 ジフテリアに似た犬や猫からの細菌感染症「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」で、初めて死者が出たという。亡くなった60代の女性は屋外で猫3匹に餌をやっていた
 
 過度の心配はいらないが、県内でも感染の報告がある。ほどほどの距離感が大事とは分かってはいても、かわいいのよね。動物に触れたら手洗いを、と厚生労働省。