一段、二段と登ること約千段。煩悩が消滅すると信じられている修行の霊山だという。芭蕉が詠んだ山形市の立石寺は通称・山寺で知られる

 一段、二段…と登れば、息が切れて口数が少なくなる。この辺りでやめようかという気持ちを変えるのは、見え隠れする頂だ。それに背中を押され、登る。遠くを見渡せる位置に立ち、改めて悟る。頂上に到達するのに近道はない。夢をかなえるのにも、近道はない

 それを14歳が身をもって示している。卓球の全日本選手権で、張本智和選手が9度の優勝を誇るベテランの水谷隼選手を破って、王者となった。2020年の五輪会場でもある東京体育館に詰めかけた観衆にこう約束した。「2年後に戻ってきて、金メダルを二つ取りたい」

 夢を現実にするすべを知っているのかもしれない。「小さいことを一つ一つやっていくことが、とんでもないところにいく近道」。練習場に張ってあった大リーガーのイチロー選手の言葉を信じ、天賦(てんぷ)の才を努力で磨いた

 目標を倒して、新たな目標も掲げる。試合中の大きな叫び声や自信に満ちた発言ばかりが取り上げられがちだが、代表合宿中はモップがけなどの掃除をしっかりとこなすという

 一段、二段、いや一気に頂上まで駆け上がった。しかし、まだ14歳。2年後、どんな景色を見ているのだろうか。