群馬、長野の県境にある草津白根山の本白根山(2171メートル)が噴火し、訓練中の自衛隊員ら十数人が噴石などで負傷、亡くなった人もいるという。火山のない四国では実感が薄いが、山とは本来動的な存在であるらしい
東海の景は富士によりて生き、富士は雪によりて生く。小説家徳冨蘆花(とくとみろか)の描写が鮮やかな富士山も活火山。内側ではマグマが鼓動している。草津白根山も、雪をまとって雄大な風景を見せていたのだろう。それが突然せき込んだ
麓の草津温泉は古くから名高い。その天下の名湯も、明治初期までは春から秋までの営業で、冬季は冬住みといって、住民は里へ下りた。「木の葉が赤くなると旅館の主人は青くなる」ということわざがあったそうだ。冬場の収入確保には、頭を悩ませたようである
交通網の発達のほか、スキー場の開設も冬の集客の後押しとなったに違いない。被害の出た草津国際スキー場は、日本で初めて営業用スキーリフトを設置したことでも知られる
現場の航空写真を見ると、雪山の山頂付近に黒く広がった火山灰が不気味だ。噴火は、大地本来の営みにほかならない。だが人と交わるようになった所では、災害となる
全国に50ある常時観測火山の一つで起きた悲劇だ。いかに難しくとも共存のすべを探るほかない。自然と生きる人間の宿命である。
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