第2次大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺の実像を語り継ぐ「ホロコースト記念館」が広島県福山市にある。意外だ。どうしてこの場所に。大塚信館長に尋ねた。「まんが人物伝 アンネ・フランク」(KADOKAWA)の監修者である
 
 始まりは半世紀近く前。合唱団の公演で訪れたイスラエルで偶然、アンネの父オットーさんと出会ったのがきっかけだ。牧師を務める市内の教会で開いた資料展には2千人を超す来場者があり、恒久施設の開設を決意した
 
 「原爆に苦しめられた広島は、平和を考えるのにふさわしい地。とりわけ、ホロコーストの犠牲になった150万人の子どもの悲劇を伝えたかった」。世界中に手紙を出して、協力を訴えた
 
 寄せられた展示品の中に15センチの小さな靴がある。ガス室に送られた幼児が履いていたそうだ。アンネが隠れ住んだ部屋の再現も。立ち止まっては考える。「なぜ人間はお互い仲良く暮らせないのだろう」(アンネの日記)
 
 73年前のきょう27日は、虐殺を象徴するアウシュビッツ強制収容所が解放された日。人には良心ありや、と絶望しそうになるが、救いは命懸けでユダヤ人を支えた人々の存在だ
 
 記念館では来月から、その一人、外交官杉原千畝(ちうね)の全国展を開く。問い合わせは<電084(955)8001>。日月祝日休館。