移設先となる本土の理解が得られない、とした安倍晋三首相の衆院予算委員会での発言は、期せずして出た本音だろう。少なくとも沖縄ではそう受け止められている
 
 発言はこうも解釈できる。つまりは本土の自治体を説得できない。だから基地負担を沖縄に押し付けるほかないのだ-。政府は基地集中の理由を、東アジアの安全保障環境を踏まえた抑止力の必要性からとしてきたが、そこには裏の事情が存在している
 
 こうした発言は首相一人のものではない。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画も、軍事面での地理的優位性より、むしろ政治的な事情からの「唯一の解決策」ともいわれる
 
 名護市長選では安倍政権が推す渡具知武豊(とぐちたけとよ)元市議が、移設阻止を掲げる現職を破り当選した。政府は「民意を得た」として工事を加速させる構えだ。ただ、この民意も複雑で、渡具知さんに投票した人ですら、出口調査では3割が「基地建設に反対」と答えている
 
 市長選での敗北は大きな痛手であっても、翁長雄志(おながたけし)知事率いる「オール沖縄」陣営が建設阻止の旗を降ろすことはあるまい。秋の県知事選に向けて激しい戦いが続こう
 
 基地を押し付けているのは誰か、と問題の根をたぐり寄せてみると、遠いようで近い沖縄の話である。本土の一角に暮らす私たちも、心穏やかではいられない。