2000年。世紀と世紀の境に、南北合同行進は実現した。シドニー五輪開会式。翌朝刊の1面用に長文の記事を出稿した。歴史的な場面に立ち会う興奮があった。それを読者に届けた
 
 読み返すと、つらい。記事は高らかに、そして気恥ずかしいほど楽観的にこう締めくくられている。「シドニーの街が真の和解の歴史に深く刻まれることを世界が祈っている」
 
 南北分断を生んだ朝鮮戦争から50年。韓国の金大中(キムデジュン)大統領が打ち出した太陽政策。五輪とスポーツの力を信じ、和解への願いを込めた。ところが、その後の世界はどうだろう。分断と対立を深めて、核戦争におびえている
 
 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)氏は、どこまで本気で、どこまで駆け引きなのか。トランプ米大統領は核のボタンを押す気があるのか。核戦争の危険があるのなら、どうやれば避けられるのか
 
 その答えを知りたいと、多くの人が思っているだろう。シドニーから18年。たった2人に振り回される中、平昌五輪で合同入場行進が再現される。それは平和へと続く確かな歩みなのか。分からないから、喜ぶに喜べない
 
 シドニーで南北行進の舞台裏を取材したK記者は、数年後、病に倒れ、30代半ばで他界した。彼の取材に注文をつけ、原稿に手を入れた私は、還暦を過ぎ古里で生きている。「真の和解の歴史」に出合えぬまま。