いつか見た映画のようだった。真っ赤なスポーツカーが宇宙空間を疾走し、それを打ち上げたロケットが再び地上へ垂直に降り立つ。テレビのアナウンサーはわざわざ、実際の映像だ、と断りを入れた
 
 宇宙ベンチャー。その言葉自体が既に夢の空間を行く。米宇宙ベンチャー企業のスペースXが、現役ロケットで世界最強の打ち上げ能力を持つ「ファルコンヘビー」の試験機打ち上げに成功した。地球低周回軌道に63・8トンの荷物を運べるという
 
 月や火星の有人飛行に向けた新型ロケットも開発中。リスクも大きいだろうに、あえて挑むのは、よほどもうかるのかしら。そう思うのは、よほど下世話でこの会社、目標を知って絶句した。「人類の救済」だそうだ
 
 最高経営責任者のイーロン・マスクさんは南アフリカ生まれの立志伝中の人。今のままでは温暖化で人が住めない星になる。人類に選択肢を、と考え、火星移住計画に本気で取り組む
 
 極端では? いやいや鴻鵠(こうこく)の志、大人物の志は、凡人には理解し難いのが常。計画は着々と進んでいる。宇宙に近づくにはコストを引き下げる必要がある。だから再利用可能なロケットの技術にこだわる
 
 マネーに狂奔する経営者ばかりではない。人類への貢献という壮大な志が、次の舞台へ社会を引っ張っていく。米国という国のすごさである。