一枚のポスターに魅せられることがある。「龍が風になる朝」。魅せられれば見たくなる。<白く長く海へ吹き出す肱川(ひじかわ)あらしは竜に例えられ…>。愛媛新聞提供の記事にこうあった
大洲市長浜の、秋から冬にかけての風物詩だという。ポスターを作ったのは地元住民らで組織する「肱川あらし予報会」。長浜は脱藩直後の坂本龍馬が四国最後の夜を過ごした地である。竜には、龍馬のイメージも重なる
会長の浜田毅さんに聞くと、臥龍淵(がりゅうぶち)という景勝地があるように「竜にまつわる伝説が残る」。龍が風に―のピークは過ぎたけれど、「気象条件がそろえば2、3月でも見られますよ」。肱川に架かる長浜大橋との組み合わせは絶景で、カメラマンをうならせる
この肱川あらしも紹介された一冊に出合った。刊行されたばかりの「窓から見える世界の風」(福島あずさ著、nakaban絵、創元社)。気象学者である著者が世界の50の風の一つとして取り上げ<このあらしの大きな特徴は、目に見える風であること>と書いている
<肱川の上を吹く強風に、上流の大洲盆地で夜間に作られた霧が押し流されて川をくだるため、まるで雲の大群が押し寄せるように見えるのです>。となればやはり一目見たい
徳島にも水と風が織りなす、とっておきの風景がある。見て残して、伝えたい。