ベストセラー「ざんねんないきもの事典」(高橋書店)によると、オランウータンの雄には残念な特徴がある。けんかに勝てば男性ホルモンが分泌され、フランジと呼ばれる両頬のひだが1日で広がる。文字通り大きな顔ができるのである
  
 結構なことではないか、といかないのは人間と同じ。いい気になっていると目を付けられ、挑みかかられる機会が増える。強いのはいくらでもいる
 
 本当は弱いのに、たまたま勝ってしまうと悲惨だ。豪傑のような面構えになったのはいいけれど、どうぞ猛者には巡り合いませんように。こそこそと生きていくほかなくなるらしい。うら悲しいバイオリンでも聞こえてきそうな話である
 
 東南アジア・ボルネオ島(カリマンタン島)のオランウータンが1999年からの16年間で15万頭近く減少した、とドイツや英国などの研究チームが発表した。元々の生息数から半減してしまった
 
 原因は森林伐採と密猟である。アブラヤシ農園の開発ですみかを奪われ、若芽を食べる害獣だと殺され、ペットとして売り払う目的で捕獲される。ヤシから取れるパーム油の出荷量は、「森の人」オランウータンが流した涙の量に比例するのだろう
 
 パーム油は化粧品やせっけん、スナック菓子などに使われ、日本でも消費量が急増している。涙には限りがあると心したい。