徳島生まれの役者は、と問われれば、その名が出てくる。誇らしく、大杉漣さんと。映画を、ドラマを引き立てる名脇役も、徳島の多くの人の目には主役として映っていたに違いない

 小松島市出身。名脇役も、千代小5年の時に上演した「えのきの和尚さん」という芝居には参ったという。指導の先生が厳しく二度と舞台なんかやりたくないと。「そんな子どもが大きくなって俳優をやっている。人生はわかりません」と学校新聞のインタビューに答えている

 22歳で舞台デビューしてから45年近く、演じた人生はどれほどか。時には暴力団幹部、時には刑事。NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」では、漫画家水木しげると結婚したヒロインの父親を務めた。自著の副題「300の顔をもつ男」、そのままである

 封切り、徳島ロケ…と、折々に記事になっていた。年明けの本紙特集の顔として登場することもあった。還暦を迎えた年にはこう話している。「役者は独りでする仕事で、いつも不安と同居している。60歳になっても、その不安を楽しみ、いい役者とは何か考え続けていきたい」

 最近はバラエティー番組で、気さくで飾らない人柄を披露。撮る人からも、作る人からも、共演者からも愛されていたのに

 還暦から古希へ、その途中で大杉さんは逝った。さよならも告げずに。