春の予感が実感になるのも、もうすぐだろう。<三月の声のかかりし明るさよ>富安風生。寒くても、冷たい風が吹いても、明るい季節は確かに近づいている
 
 そんな実感を先取りするなら、勝浦町が「旬」だろう。町に広がるのは、ひな飾り。毎年のことながら気持ちが明るくなる。30回を迎えた「ビッグひな祭り」にはひな人形を送った人の思い、飾る人の思いが詰まっている
 
 50日間の、この行事を主催するのはNPO法人阿波勝浦井戸端塾だ。86歳を筆頭に、39歳までの約40人。寄せられた人形を供養し、約3万体の人形を飾り付ける。高さ8メートル、25段のピラミッド型巨大ひな壇はやはり圧巻だ
 
 華やかな着物をまとったおひな様、一体一体を丹念に眺める人も少なくない。地元の小学生を案内していた理事長の稲井稔さん(78)が話す。「大きくなっても、どこに住んでいても、このおひな様を思い出してもらいたい」。子は町の宝という
 
 宝といえば、ひな祭りも町の宝に違いない。宝になるまでは前史もあり、先人もいた。開幕した日には、長年携わった初代理事長の故殿川武男さんの家族らに感謝状が贈られた
 
 町の奥、坂本地区でも「坂本おひな街道」「おひな様の奥座敷」が開かれている。勝浦から吹いてくるのは、春の風かもしれない。まもなく子どもの成長を願う桃の節句。