ナチスが抹殺したのはユダヤ人だけではない。障害者や同性愛者、路上生活者らも対象とし、公式資料で7万人余り、実際には20万人ともいわれる犠牲者が出た
 
 「生きるに値しない生命」があり、それを排除しなければとの考え方はそのころ、特異なものではなかった。いわゆる優生思想に基づき、米国ではいち早く「断種法」が制定されている。日本も戦時中、ナチスの断種法に倣った国民優生法を成立させた
 
 「不良な子孫の出生防止」をうたう戦後の旧優生保護法も、この流れをくんでいる。不妊手術を強制された障害者らは1万6475人(本県391人)に上る。現在の人権感覚からすると、あまりにひどい
 
 「医師たちの本音を言えば、遺伝の問題よりも、障害のある人が子どもを育てるのは無理とする考えが大きかったのではないか」と関わった精神科医は言う。その感覚は日本の障害者福祉の歩みを振り返ると容易に想像できる
 
 1996年、旧法が母体保護法に改正されたのも機に、強制不妊手術の実態調査を求める声が上がったことがある。社会は聞く耳を持たなかった
 
 科学の発達とともに「命の選別」につながりかねない場面に直面することが増えた今、この社会が犯した罪と、今度こそしっかり向き合わなければならない。被害者は高齢化している。救済を急ぎたい。