神山町の笠井利幸さん(79)は、徳島中央森林組合を昨年退職した。けれど、仕事で長年世話をしてきた木々が心配でならない。居ても立ってもいられず、助っ人を買って出た。赴く先は、県立神山森林公園イルローザの森

 公園には天皇、皇后両陛下が植えた杉とヤマモモがある。「お手植え木」である。即位して最初の地方公務が平成元年5月、ここで開かれた全国植樹祭だった。笠井さんは植樹後の管理の先頭に立ってきた

 朝夕の点検は欠かさない。枯れた枝があれば切り落とす。傷があれば腐らないよう消毒薬を塗る。台風への備えはひと苦労で、安全ベルトを装着して木に登り、倒れないようにロープを張った

 「見に来る人が多い木ですので」。常に油断できないそうだ。今は職員に指示するだけとは言うものの、お手植え木を観察するまなざしは変わらず険しい

 杉は背丈が約20メートル、幹は直径50、60センチに育った。ヤマモモも高さ10メートル近くあり、夏には赤い実がなる。1メートルほどだった苗木の成長は、平成の歩みにぴたりと重なる。「大木になりました、と両陛下にお伝えしたい」と、代替わりを前に笠井さん

 杉の商用適齢は60~80年が多いという。そう聞いて、お手植え木を眺めてみた。30年なんてまだ若い。早すぎるようにも思えてくるが、それでも言わねば。「さよなら平成」。