新天皇の即位をもって上皇さまが念願した「譲位」が完結した。次の世代に皇位を託し、自らは表舞台から退く。改元をはさみ二日にわたった退位と即位の儀式は、長い皇室の歴史に照らすと、一体の「譲位」儀式ととらえた方がいいだろう。

 この言葉を避けるのは、憲法上の制約で天皇に政治的な権能がなく、自らの意思で皇位継承を決定できないからだ。一般の社会になぞらえれば、当主引退による息子世代への承継である。

 政府は早急に、残された課題に取り組むべきだ。女性宮家創設を含む皇位継承の安定策である。今回の退位、即位は一代限りの退位特例法に基づいて行われた。同法の付帯決議では、代替わり後に速やかに検討するよう政府に求めている。

 今、皇室の現状や皇位継承の問題に、国民の関心は高まっている。この期を逃すと、過去と同様、何も解決しないまま放置される恐れがあるのではないか。

 上皇さまは、「象徴」として即位した初の天皇であるとともに、天皇家にとって、長い歴史を引き継ぐ125代当主だった。そのために、「象徴はいかにあるべきか」と自問する一方、皇統をいかに安定的に継続させるかという難題に長く苦悩されていた。

 2016年8月のビデオメッセージで、その思いがにじんだ部分がある。「長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、(略)象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました」と訴えかけた。

 皇位の安定継承が上皇さまの根源的な願いであり、将来が見通せない現状や制度に悩んでいた。それは、現在も変わらないだろう。

 皇位の後継者は皇室典範で男系男子に限られている。新天皇即位後の皇位継承順位は、皇嗣となった秋篠宮さまが1位、その長男悠仁さまが2位、そして高齢の常陸宮さまが3位である。

 ほかの皇族はみな女性。現在の制度では、新天皇の次の世代を担うのは悠仁さま一人である。皇室の先細りは誰の目にも明らかだ。

 大島理森衆院議長は4月中旬の講演で「いよいよ政治の場で考えなければならない時期が近づいている。大きな政治課題だ」と語り、先送りできないと政府に念を押した。

 悠仁さまはまだ12歳。だから、先々の皇位など喫緊の問題にあらずというのが、政府や国会議員の本音ではないのか。特例法の付帯決議を空文化させてはならない。

 自民党保守派は、女性宮家創設は女性・女系天皇誕生につながると反対し、「皇室の伝統を守る」と主張するが、いかに守るかを語らない。戦後、皇籍を離脱した旧皇族の未婚男性に皇統維持の期待をかけるなら、その方策について具体的に提起する時期に来ている。