憲法が施行されて、きょうで72年になる。

 国民が主権者であり、基本的人権を尊重し、平和主義を貫く。これが基本原則だ。

 多大な犠牲を出した戦争の反省から生まれた憲法である。節目の日を迎え、その精神を改めて胸に刻みたい。

 元号が平成から令和に変わり、例年になく意識されるのは第1条である。

 「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」。平和を希求し、国民と苦楽を共有してきた上皇さまの姿は、この条文を体現したものと言えるだろう。

 天皇陛下も上皇さまの歩みに「深く思いを致し、自己の研鑽に励む」と述べ、憲法にのっとり「象徴としての責務を果たす」と誓った。

 憲法の重要性は改めて強調するまでもない。「国事行為」として行われた皇位継承儀式「剣璽等承継の儀」は、憲法が定める政教分離の原則に反しないよう、細心の注意が払われた。

 「公的な皇室行事」として秋に開かれる重要祭祀「大嘗祭」を巡っても、国費の支出は違憲だとの批判がある。昨年には、秋篠宮さまが疑問を呈して議論を呼んだ。

 政府は、平成の代替わり時の流れを踏襲すると決めているが、憲法上の疑義は拭えない。皇室は、より国民に身近な存在になりつつある。政府も、そうした変化に即した対応が求められる。

 改元を機に、憲法改正の議論を加速させようという動きも見られる。

 安倍晋三首相は先月、超党派国会議員でつくる「新憲法制定議員同盟」の大会に「令和という新しい時代のスタートラインに立ち、この国の未来像について真正面から議論を行うべき時に来ている」とのメッセージを寄せた。

 自民党が昨年まとめた改憲案は、9条への自衛隊明記と緊急事態条項、参院選「合区」解消、教育充実の4項目である。

 このうち自衛隊明記は、9条の戦争放棄や戦力不保持をそのまま残し、新たに「自衛隊の保持」を加える案だ。

 「自衛隊の違憲論争に終止符を打つ」と首相は言うが、野党からは「海外で戦争ができる自衛隊になる」といった反発が上がっている。戦後一貫して日本が掲げてきた「専守防衛」が骨抜きになるとの懸念だ。

 内閣に権限を集中させる緊急事態条項は、過度な人権制限につながる恐れがある。「合区」解消と教育充実は、改憲の必要性に乏しい。

 憲法といえども、時代に応じて変えるべきところがあれば、議論を深めるのは当然だろう。

 だが、武力行使の歯止めとなってきた平和主義など、変えてはならないものがある。戦争がなかった平成を受け継いだ令和である。新しい時代も、その根幹を大切にしていきたい。