[凶器]殺傷に使用される器具。続けて広辞苑はこう解説する。<銃砲・刀剣のような性質上の凶器と、棍棒・斧のような用法上の凶器との別がある>

 車が「走る凶器」と呼ばれた時代があった。交通事故が激増し社会問題となった昭和30、40年代である。ピークの1970年、死者は全国で1万6765人を数えた。徳島でも同時期、最悪の180人が死亡した(71年)

 自動ブレーキなど安全装備は年々進化している。それでも昨年の犠牲者は3532人(県内31人)に上る。地方の生活に欠かせない車は、今も使い方次第で「用法上の凶器」になる

 大津市で、散歩中の保育園児らが交通事故に巻き込まれ、16人が負傷、うち2人が亡くなった。直前まで初夏の琵琶湖畔、陽光を浴び、心地よい日常が続いていたはずなのに。あまりにも短い生涯に突然幕が下ろされた

 結果は重大だが、52歳と62歳の女性が起こしたのは、右折車と直進車のありふれた事故である。昨年、県内で発生した人身事故は約2800件。大事故の種は身の回りにいくらでも潜んでいる。「凶器」を扱う、その自覚が運転する際は必要だ

 ありふれた日常を悲劇に変える交通事故。人ごとではない。散歩は公園に限る、移動にはバスを使う、といった手もあろう。子どもの安全に、まだやるべきことがあるはずだ。