幼児教育・保育を無償とする改正子ども・子育て支援法が参院本会議で可決、成立した。10月に予定される消費税率10%への引き上げの税収増加分が財源。増税と無償化がワンセットで、いずれも実施は10月からだ。

 誰もが払う消費税を子育て世帯に手厚く配分する。勤労世代の暮らしや働き方だけでなく、施設経営の在り方にも多大な影響を与えるだろう。

 安倍晋三首相が2017年10月の衆院選で打ち出した「全世代型社会保障」の目玉政策だ。日本の未来も左右する大転換である。

 実効ある少子化対策となるのか。それとも選挙に勝つための甘言やばらまきに終わってしまうのか。少子化を「国難」と銘打ち、衆院解散の大義名分とした公約である。安倍政治の真価が問われる。

 しかし、7月の参院選を控え、首相と近い自民党幹部から、先行きの景気予測と絡めた増税延期論が浮上。首相が延期の是非を争点に衆参同日選に踏み切るのでは、との憶測がくすぶっている。

 制度設計に関われなかった野党側が延期や凍結を主張するのは自由だが、この期に及んで政権側が増税延期をちらつかせるのは無責任であり、有権者に不誠実だ。

 安倍首相は「リーマン・ショック級の事態」がなければ予定通り実施する、と繰り返している。選挙対策で3度目の増税延期を打ち出し、衆参同日選に持ち込もうとすれば、かえって政治不信に拍車を掛け、有権者の信頼を失うだろう。

 10月の実施まで時間的な余裕は乏しい。実務を担う市町村は、法成立を機に関連の条例案づくりなど準備を急ぐ。政権・与党側が延期を口にできる時期は既に過ぎている。もはや後戻りはできない。

 日本の社会保障制度が高齢者対応に偏っているとの批判は若い現役世代に強かった。年金財政の将来不安に加え、医薬の進歩による医療費高騰、介護保険財政の悪化。社会保障の暗い見通しが、幕を開けた「令和」に大きな影を落としている。

 保険料アップによる負担増も勤労者にのしかかる。「誰もが高齢者になるのだから」との論理で理解を求めても、若者の納得を得るのは難しい。

 「全世代型」を強調し、支える側の若い世代を「受給者」として位置付けることは、重税感を和らげ、社会保障維持への気運を高める上で有意義だ。

 子育て支援法では、国の基準を満たさない認可外保育所なども、5年間は一定額の範囲内で費用を補助する。教育・保育の質は確保されるのか。無償化より、待機児童対策を急ぐ方が少子化に効果があるとの指摘は根強い。

 総費用は年間約8千億円が見込まれる。増税の痛みに見合う少子化対策となりうるのか。参院選の争点として論議を深めるとともに、実施後の検証に向け、厳しく注視していく必要がある。