徳島赤十字病院の看護師德永亜希子さん(44)は、仕事でつまずく度に5年前の出来事を思い出し、もうひと踏ん張りする。院内で催した男性患者の結婚式と、直後に起きた小さな奇跡。男性は40代、末期がんだった

 院内挙式は、男性の彼女から婚姻届を出すと聞いた德永さんが、仲間の看護師らとともに企画した。新婦のドレスやブーケは、病院のスタッフが持ち寄った。会議室の壁には紙の花飾りで彩られた「おめでとう」の文字。車いすで案内された男性は喜び、大泣きした。結婚指輪が間に合わず、代わりに赤いリボンを互いの手首に巻き、誓いを立てた

 不思議なことがすぐに起きた。男性は食事がとれないほど弱っていたのに、ケーキを口にした。痛み止めの点滴や酸素吸入器を外し、外出も。一時帰宅して穏やかな時間を過ごせたという。2週間後、男性は息を引き取った

 德永さんは振り返る。「患者を大切に思えば、時に奇跡が起きる。緩和ケアの在り方を、この出来事に学んだ」

 徳島市であった看護週間(18日まで)の記念行事で、看護職を希望する100人近い高校生らに体験を伝えた。看護現場は目下、人手が足りない

 確かに看護の仕事はきつい。しかし、人を思いやる心を持ち続ければ、誰もがきっと德永さんのように奇跡の導き手になれる、すてきな仕事らしい。