世界経済を揺るがす「貿易戦争」をこれ以上、激化させてはならない。米中両国は粘り強く協議を続け、着地点を見いだしてもらいたい。

 米国は9、10日の閣僚級貿易協議で溝が埋まらず、中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)分への追加関税率を、25%に引き上げる制裁措置を発動した。

 さらに13日には、これまで対象外だった3千億ドル分に最大25%の追加関税を課す「第4弾」の措置を打ち出した。

 トランプ大統領の矢継ぎ早の制裁攻勢は、政権の強い姿勢を見せつけ、中国に軟化を迫る狙いがあったのだろう。

 しかし、これに対して中国はすかさず、米国からの輸入品600億ドル分の追加関税率を最大25%に引き上げると発表した。対立は再び「報復合戦」に突入した。

 力ずくで相手国をねじ伏せるのがトランプ流だが、制裁は中国だけでなく、米国にも打撃を与える。第4弾が発動されれば、ほぼ全ての中国からの輸入品が追加関税の対象になるからだ。

 これにより、食料品や衣料、携帯電話といった身近な品が値上がりし、消費者を直撃する。中国の報復関税で、大豆、トウモロコシなどの農家も苦しんでいる。

 中国の政策にも重大な問題がある。

 米国が批判しているのは貿易不均衡に加え、産業補助金と、外国企業に対する中国企業への技術移転の強要だ。

 産業補助金は、輸出促進目的を禁じた世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する疑いがある。技術移転の強要は知的財産権の侵害につながる。いずれも公平な競争をゆがめるもので、到底容認できない。

 中国は、こうした「国家資本主義」とも呼ばれる政策を国家の尊厳に関わるとし、「決して譲らない」と強調している。

 だが、ルールを軽視した不透明な経済システムは、国際社会の理解を得られまい。中国は構造改革に踏み切るべきである。

 米中対立の背景には、最先端技術を巡る覇権争いがあるとされる。安全保障が絡むだけに、政府主導で産業育成に突き進む中国に、米国が危機感を抱くのは理解できる。

 ただ、だからといって行き過ぎた制裁が正当化されるわけではない。

 国際通貨基金(IMF)は双方が互いの全輸入品に25%の関税を課すと、中国は最大1・5%、米国は0・6%、実質国内総生産(GDP)が減少すると予想している。報復合戦が、日本など世界の経済に深刻な影響を及ぼすのは明らかだ。

 制裁が実際に適用されるまでには、しばらく猶予がある。米国の第4弾の発動も最短で6月末になる見通しだ。対話の時間は残されている。

 両国は世界1、2位の経済大国である。その責任を自覚し、最悪の事態を避ける努力を続けてほしい。