不動産の所有者が亡くなった際の相続登記ができておらず、所有者が分からなかったり、連絡がつかなかったりするケースが全国的に増えている。「相続登記ができていないと用地買収ができず、防災のための公共事業も進まない。時間の経過に伴って法定相続人が増えていくので、親が亡くなった時点でしてほしい」と訴える。

 局次長を務めた前任地の熊本地方法務局で印象に残っているのは2016年の熊本地震。着任して間もなくの発生だった。

 前震が起こった日は熊本市中心部の飲食店にいた。公共交通機関はストップ。スマートフォンの地図を頼りに3キロ離れた法務局まで歩いた。災害対策本部を設置して職員の安否や庁舎の被害状況の確認に追われた。

 復興を後押ししようと、地震で住めなくなった家を取り壊した際に必要な「滅失登記」を、所有者に代わり法務局が特例で行った。「早く家を建てて生活を安定させたいと考えている被災者の役に立てたと思う」

 愛媛県宇和島市出身。大学を卒業し、松山地方法務局新居浜出張所に赴任した頃は、バブル景気の真っただ中だった。「登記簿の閲覧者が、今よりも格段に多かった。書庫から大きな登記簿を担いで運んでいると、体重がすぐに5キロ落ちた」と振り返る。

 徳島勤務は16年ぶり2回目。4月の休日には職員と四国霊場1番札所・霊山寺から5番・地蔵寺まで歩いた。「天気も良くすがすがしかったですね」。松山市の自宅に妻と次女を残して単身赴任。58歳。