約60年ぶりに公演が開かれる寺内農村舞台=那賀町寺内

約60年ぶりに公演が開かれる寺内農村舞台=那賀町寺内

 那賀町寺内の寺内八幡神社境内にある農村舞台で22日、約60年ぶりとなる公演が開かれる。県伝統文化活性化推進協議会が、県内で使われないまま眠っている農村舞台の魅力を知ってもらおうと企画した。地元の人形浄瑠璃座・丹生谷清流座などが出演する。

 当日は午後1時半開幕で入場無料。雨戸を開けた舞台の前で、清流座、城北高民芸部OBでつくる青年座とポラリス座の3団体が人形5体を遣って共演する「三番叟絵巻」を披露する。人形の遣い方などを学ぶワークショップも開かれる。

 農村舞台は間口約7メートル、奥行き約5メートル。舞台内の壁などに書かれた公演記録などから、少なくとも明治期以前に建てられたとみられる。舞台内には、「傾城阿波の鳴門」の舞台装置と思われる格子戸や、襖(ふすま)からくりをセットするための鴨居などがある。

 阿波農村舞台の会によると、戦前までは人形浄瑠璃公演などが開かれていた。氏子の中川アイ子さん(79)によると、1955年ごろまでは住民が秋に村芝居などを披露していたが、過疎化が進み、同年ごろから公演は行われていないという。

 昨年4月、元町地域おこし協力隊員の桑高仁志さん(38)が寺内にゲストハウスを開業した際、阿波農村舞台の会地域文化コーディネーターの佐藤憲治さん(55)が訪れた。その時、近くにある同舞台を知り佐藤さんの呼び掛けで公演が実現した。

 佐藤さんは「棚田のあぜ道を歩き、杉林を抜けた先にひっそりたたずむ農村舞台は神秘的そのもの。ぜひその魅力を感じてほしい」と話している。

 農村舞台の会によると、県内には2013年11月時点で農村舞台が88棟現存し、このうち那賀町が42棟を占める。このうち人形浄瑠璃などの公演に活用されているのは県内で10棟、うち那賀町6棟となっている。

 公演の問い合わせは阿波十郎兵衛屋敷<電088(665)2202>。