米国とイランの対立が深刻さを増している。

 米国が追加制裁に加え、イラン周辺地域に空母を派遣するなど軍事面での圧力を強めているからだ。

 イラン核合意から一方的に離脱したトランプ米政権が、地域の緊張を高めていることは明らかだ。偶発的な軍事衝突も懸念されており、自制すべきである。

 イランにも非はある。核合意の一部履行の停止を表明し、核開発を加速させる可能性も示唆した。制裁によって経済が苦境にあるとしても看過できない。

 イランは今のところ核合意からの離脱を否定している。ただ、現状が続けば核合意は破綻し、核開発競争が再燃する恐れがある。

 イランを核合意にとどめておくことが重要だ。核合意の参加国をはじめ地政学的に関係が深い欧州連合(EU)は、米制裁を回避し、イランへの経済支援に尽力してもらいたい。

 トランプ政権は、中東でのイランの影響力を「脅威」としている。米メディアによると、空母や爆撃機部隊の派遣は、イラン指導部が複数の武装勢力に米軍の要員や施設への挑発行動を指示したとの情報が引き金になったという。

 イランは情報を虚偽としたが、12日にはアラブ首長国連邦(UAE)の沖合でサウジアラビアのタンカーなどが攻撃を受けた。米当局はイランなどが関与した可能性があると分析している。

 親イランの武装組織と、米国の同盟国であるイスラエルやサウジとの争いも先鋭化しており、緊張はエスカレートするばかりだ。

 トランプ政権はイラン包囲網の構築に注力しているが、圧力一辺倒の外交に国際社会が同調するはずはない。

 一方、米国が離脱した核合意は崩壊の瀬戸際にある。

 イラン政府はこれまで合意内容を守ってきた。だが、相次ぐ制裁で経済が疲弊。国内の突き上げもあり、強硬路線にかじを切り始めた。

 ロウハニ大統領は核合意参加国(英仏独中ロ)に対し、制裁の影響を埋め合わせる有効策を60日以内に実現しなければ、ウラン濃縮や重水貯蔵量に関する合意の制限を順守しないと警告した。

 こうした事態を受け、EUと英独仏の外相は、イランに核合意の完全な履行を続けるよう求めるとともに、「イランとの貿易を継続するため努力する」と宣言した。

 追加制裁でイラン経済がさらなるダメージを被ることは間違いない。関係国が、救済につながる方策を早急に見いだすことが必要だろう。

 情勢が緊迫する中、イランのザリフ外相が急きょ来日した。合意維持に向け、日本の支援・協力を得るためだ。

 安倍晋三首相に、国際協調を軽視するトランプ氏の歯止め役になってもらいたいとの思いもあるという。友好国として、首相はしっかりと期待に応えてほしい。

 <2019・5・18>