国内外で活躍する現代美術作家・栗林隆さん(48)=インドネシア在住、武蔵野美術大客員教授=が、吉野川市山川町の阿波和紙伝統産業会館で、阿波和紙を使った巨大なヒマワリのオブジェを制作している。28日から都内で始まる演劇公演「世界会議」の美術セット用で、加工しやすい和紙の特性や質感を生かし、存在感あふれる作品に仕上げる。
オブジェは高さ約4メートルの紙のヒマワリ4本で「今にも枯れて死にそうな状態」を表現。和紙の原料となるコウゾの繊維を、紺や深緑などに染めて型枠で成形し、ヒマワリの花の細部や葉脈まで忠実に再現している。
舞台ではガンジーやマザー・テレサ、ヒトラーなど歴史上の人物7人の亡霊が登場し、自分たちの人生を振り返りながら、現代社会の行く末を観客に考えてもらう趣向。約90平方メートルのステージ上に、巨大なヒマワリ4本を宙づりにし、映像なども駆使して「あの世でもこの世でもない世界」を演出する。
栗林さんは、国内外でインスタレーション(空間芸術)の作品を発表している現代アーティスト。昨年6月ごろ、演出家の小池博史さん(60)に声を掛けられ、以前から構想を温めていた和紙を使うことにした。これまでも「ネイチャー・センス展」(2010年、東京・森美術館)の出品作など過去2回、同館で創作しており、今回も協力を求めた。
制作は7日に始まり、22日まで和紙会館のスタッフらと共に続ける。栗林さんは「阿波和紙の素材感を生かし、ヒマワリの枯れていく絶妙な感じがうまく表現できそうだ。舞台上で演技と一緒になった際にどんな相乗効果が生まれるか楽しみだ」と話した。
公演は吉祥寺シアター(武蔵野市)で28日から2月5日まで、9日間行われる。