世界を核兵器の脅威から解放するためには、強大な核戦力を持つ米国とロシアの核軍縮が喫緊の課題である。

 今月半ば、ポンペオ米国務長官がロシアを訪問。ラブロフ外相、プーチン大統領と会談し、関係改善を目指すことで一致し、核軍縮など米ロの戦略的安定について近く協議することで合意した。

 関係改善を確かなものにし、実効ある核軍縮につなげなくてはならない。

 米国のトランプ大統領は今月初め、ロシアのプーチン大統領との電話会談で、米ロに中国を加えた核軍縮協定の可能性を巡って意見交換した。

 トランプ氏は中国も参加する意向だとして、米ロ中による核軍縮の「包括的な合意」の実現に意欲を示した。

 これに対し、中国外務省は「中国はいかなる3カ国間の核軍縮協議にも参加しない」と言明。中国の核戦力は「安全保障上の必要最低水準」で米ロより少ないと主張した。

 トランプ氏は米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄するなど、核軍縮に後ろ向きの姿勢を取ってきた。 その要因の一つに、条約に縛られない中国がミサイル開発と配備に突き進む状況への危機感があるようだ。

 米中の思惑のずれは鮮明になったと言える。将来的には中国の参加も求められようが、まずは米ロが率先して核軍縮に取り組み、成果を挙げることが大切ではないか。そうしなければ、核・ミサイル開発に前のめりな他の国々に自制を促すのは困難だろう。

 核開発疑惑があるイランを巡っては昨年、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱。今月、イランのロウハニ大統領は、核兵器の原料にもなる濃縮ウランの貯蔵量の制限など核合意の履行を一部停止する方針を表明した。

 「米国第一」を掲げるトランプ外交には危うさがつきまとう。プーチン氏も2014年のウクライナ政変の際に、核兵器使用の準備をするようロシア軍に指示したと明らかにしている。核大国の指導者としての自覚が問われる。

 両首脳は核軍縮に向けた決意を世界に示すべきだ。

 来年は核拡散防止条約(NPT)再検討会議がある。15年の前回会議では、核保有国と非保有国が対立し、最終文書をまとめられず決裂した。

 発効から来年で50年になるNPTで、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。

 NPTは米国、ロシア、英国、フランス、中国の五大国に核保有を認める一方、保有国に核軍縮義務を課した。保有国が率先して核兵器削減に取り組まなければ、非核保有国の不満は高まる一方だ。

 03年にNPT脱退を宣言して核・ミサイル開発を続けてきた北朝鮮や、NPT不参加の核保有国で緊張が続くインドとパキスタンなど、世界に火種は尽きない。

 多くの国に影響力を持つ米ロの責任は大きい。国益よりも世界の安定を優先し、核軍縮に取り組んでもらいたい。