近松門左衛門の浄瑠璃「冥途の飛脚」―。飛脚屋の亀屋忠兵衛は客に届けなければならない大金を、ほれ合う遊女梅川の身請けに使ってしまう。捕まれば死罪。2人が大坂から大和国へ逃避行しようとする場面の語りは秀逸だ 「栄耀栄華も人の金、果ては砂場を打ち過ぎて、跡は野となれ大和路や、足にまかせて」。この名文句が「後は野となれ山となれ」になったとされる そんな言葉のようにはいかないのが、既に山となっているプラスチックごみだ。企業などから排出される産業廃棄物のプラごみが国内で大量に滞留している

 主な輸出先だった中国が一昨年末に輸入を禁止したのが響いた。環境省は市区町村に対し、家庭ごみだけではなく、産廃扱いのプラごみも受け入れるよう要請した

 私たちが出したプラごみの処理に、世界中が頭を抱えている。東南アジアでは海洋汚染が深刻で、浜辺に打ち上げられたクジラの胃からプラスチックカップが115個も見つかる例もあった。微小なマイクロプラスチックは有害物質を吸着して魚介類に取り込まれると、食物連鎖で人間に悪影響を及ぼす恐れが指摘されている

 2050年までにプラごみの海への流出が、世界の海に生息する魚の総重量を超えるとの予測もある。地球環境の危機を前に、忠兵衛のように逃げ出すわけにはいかない。