初夏の青空の下、緑が鮮やかな景色の中を、JR牟岐線の列車が駆け抜ける=阿南市桑野町

 田植え作業が終わり、苗が活着して葉を伸ばし始める頃。まだ水面がのぞいている水田の光景が好きだ。

 水を張った田んぼは大きな池のようで、周囲の景色を映し出す。折しも新緑の季節であり、水に映った深緑と合わせ、辺り一面が緑に染まる。

 鉄道好きにとって、水田の光景に列車の姿があると、さらにうれしくなる。毎年4月下旬から5月下旬まで、田んぼと列車の組み合わせを追うが、双方をうまく捉えられる場所は県内に限らず年々減っている。

 ある場所では、田んぼが宅地や商用地に姿を変えた。別の場所では稲作をやめ、雑草が生い茂る休耕田になった。かつて有名だった撮影ポイントはソーラーパネルが目立つようになり、訪れる愛好家を残念がらせている。

 前日の大雨は上がって青空が広がる中、JR牟岐線が走る阿南市桑野町へ出掛けた。桑野町周辺には昔ながらの水田が残っているものの、列車の本数は少なくなってしまい、待ち時間が長い。

 山の影が水面に映る田んぼのあぜ道で列車を待った。涼しい風が吹き抜け、新緑の時期独特の香りが鼻をくすぐる。のんびりとした時間が過ぎる中で、列車が走り去っていく。