英国のメイ首相が、欧州連合(EU)からの離脱を巡って国内政治を混乱させた責任を取り、辞任を表明した。

 EUと2年がかりでまとめた離脱協定案も、与党・保守党内の理解すら得られず、議会では3度否決された。もはや打つ手を失っており、辞任はやむを得ない判断といえるだろう。

 次期首相は、保守党の党首選を経て7月末までに選出される見通しだ。離脱問題で、これ以上英国政治を停滞させるべきではない。首相交代を、混迷打開の契機としなければならない。

 メイ氏が最終的に退陣に追い込まれたのは、EU離脱の賛否を問う再度の国民投票を、条件付きで認める方針を示したからだ。

 苦肉の策とはいえ、最近の世論調査ではEU残留が過半数を占めており、再度の国民投票も解決策の一つとして十分考慮に値する案だった。

 しかし野党・労働党にすり寄る姿勢が保守党内の離脱強硬派の猛反発に遭い、閣僚級の政権幹部が辞任するなど、退陣圧力が限界に達した。

 2016年6月の国民投票後に就任したメイ氏の政権運営は、当初から誤算続きだった。とりわけ批判を浴びたのは、EUとの交渉をほぼ独断で進めてきたことである。

 懸案だったアイルランドとの国境管理の問題では、関税徴収の具体策が決まるまで、英国全体がEUの関税同盟にとどまることを決断。指導力を発揮したはずだったが、これが「EU支配」の継続を警戒する離脱強硬派との越え難い溝となった。

 政権基盤の強化を狙って前倒しで行った17年の総選挙では情勢を読み違えて大敗し、求心力を一気に失っている。

 次期首相として名が挙がっている複数の候補のうち、離脱強硬派で元外相のジョンソン氏が最有力とされる。何の取り決めもない「合意なき離脱」の急先鋒でもある。

 人の行き来や物流の停止など大混乱が予想される合意なき離脱には、野党だけでなく、与党内にも慎重意見が根強い。当然だろう。

 気になるのは、26日までEU加盟28カ国で行われた欧州議会選の行方だ。

 英国選出議員を巡っては、速やかな離脱を訴える新党が保守、労働両党を押しのける勢いだ。他国でも英国同様、反EUを訴える勢力が支持を伸ばしている。

 欧州議会の一定数をEU懐疑派が占めるようになれば、10月末が離脱期限となっている英国との交渉にも影響が出てこよう。

 英国だけでなく欧州で、分断へとアクセルを踏む勢力が力を増している。メイ氏の辞任表明によって、合意なき離脱が、さらに現実味を帯びてきたといえるだろう。

 国内外に与える影響を考えれば、「合意なき」という無責任な態度が許されるはずがない。英国とEUに今必要なのは、「妥協」を見いだす努力だ。