「強度と徹底さがある作品を期待したい」と話す吉村萬壱さん=大阪府貝塚市の仕事場

 「第2回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」は10日の応募締め切りまで1週間余りとなった。最終選考委員長の吉村萬壱さん(58)=大阪府貝塚市=に、今からでもできることや、応募作品への期待などを聞いた。

 阿波しらさぎ文学賞締切迫る 6月10日まで全国公募

 「締め切りは、すごい力を引き出してくれる。時間がないからもう駄目だと諦めず、奮って応募してほしい」と呼び掛ける。

 吉村さん自身、40歳で文学界新人賞を受賞した時、最後の1週間で100枚の原稿を書き上げた。それは1週間分ではなく、40年分の力が出たのだという。20歳なら20年分の、80歳なら80年分の秘められた力を引き出せる可能性がある。

 吉村さんが応募作に求めるのは強度だ。「どんな方向に突き抜けていてもいい。とにかく見過ごせない作品を書いてほしい」

 風が吹いて木の葉が一枚飛ぶだけでもすごくインパクトが出せる、すごい宇宙が描ける、というのが吉村さんの持論だ。「美しくても、淡くても、何も起こらなくても、そこに徹底さを追求してほしい」

 作中に徳島に関連したモチーフを登場させなければならない条件については、こう説明する。

 阿波踊りや人形浄瑠璃、弘法大師、四国霊場など、徳島には書いてみたくなる文化が多い。しかし、注意しなければいけないのは、顕彰や紀行文に終わらせないことだ。アイデアだけでは物足りないし、徳島を褒めることにこだわり過ぎないないことが重要になる。「批評精神はあっていい。それによって地域が活気づけばいい。純粋に面白い文学作品を求めている」

 作品をどの段階で手放すかについては、とても難しい問題だ。もしもなかなか満足できないとしたら、それだけ作品に思い入れが強いということで、決して悪いことではない。そんな場合は、ぎりぎりまで推敲を重ねた上で応募することを奨励する。

 昨年、阿波しらさぎ文学賞は神戸市の男性、徳島新聞賞と徳島文学協会賞は徳島市の男性がそれぞれ受賞した。第2回は、徳島県民が阿波しらさぎ文学賞に選ばれるか、初の女性受賞者が誕生するかなども注目される。

 個人的にはエログロやナンセンスの要素が強い小説を数多く手掛ける吉村さん。しかし、純文学、SF、エンタメ、ファンタジーなど、応募作のジャンルは問わない。「好き嫌いでは選ばないので安心してほしい」と笑う。

 何よりも小説だからこそできる面白い見方や場面の切り取り方を重要視する。「架空のものが持つ力を思う存分に発揮した小説を読ませてほしい」とたくさんの応募を心待ちにしている。

 よしむら・まんいち 1961年松山市生まれ。2001年「クチュクチュバーン」で文学界新人賞、03年「ハリガネムシ」で芥川賞、16年「臣女」で島清恋愛文学賞。高校教師を経て13年から作家活動に専念。