紙すきを体験する米国の美術大生=吉野川市山川町の阿波和紙伝統産業会館

藤森洋一理事長

【奨励賞】阿波和紙伝統産業会館 

技術継承し魅力発信

 阿波和紙伝統産業会館は1989年、吉野川市山川町に伝わる阿波和紙の製造技術を継承し、魅力を発信する拠点施設としてオープンした。会館と同名の財団法人が運営。阿波手すき和紙製造技法の県無形文化財保持者の藤森洋一さん(72)=山川町川東=が理事長を務める。

 会館では、和紙の手すきから乾燥、仕上げまで一連の工程をガラス越しに見学できる。手すき作業の体験も楽しめ、職人に教わりながら半紙やはがきを手軽に製作。地元小学生は毎年、卒業証書を手作りし、伝統文化に触れている。

 芸術家からの人気も高い。海外では80年代に和紙を用いたアート作品が制作されており、これを参考にした「ビジティングアーティスト」事業を開館当初から展開。芸術家が山川町に数週間滞在して手すき技術を学び、創作活動に励む内容で、これまでに20カ国以上から100人超が参加した。

 会館は芸術家と地元住民の交流をさらに進めようと、2016年度から「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」事業も始めた。芸術家が小学校で出前授業をしたり、展覧会を開いたりして地域のにぎわい創出に一役買っている。

 和紙の新たな可能性も追求する。インクジェットプリンターに対応した和紙を開発し、独特の色合いや質感が写真家に人気だ。藍染和紙にも取り組み、アート作品だけでなく建物の壁紙などに利用されている。

 洋紙の普及で衰退の一途だった和紙。会館は、現代アートへの活用や新たな商品の開発で活路を開き、国内外にファンを増やしている。多彩なイベントや芸術家交流事業も積極的に展開して、阿波和紙の魅力を発信している。

藤森洋一理事長インタビュー 

地域貢献を目指し活動

 ー受賞の感想は。

 「阿波和紙伝統産業会館は地域にどう貢献できるか」という趣旨で開館した。30年にわたる活動を評価していただき、今までの取り組みは間違いではなく、地域の人に喜んでもらえているのだと思った。

 ー阿波和紙の製造技術継承や魅力発信に尽力している。

 阿波手すき和紙製造技法の県無形文化財保持者に指定されている私が亡くなっても、和紙会館があれば後世に技術や史料を伝えられる。製作現場を公開し、紙すき体験ができるのも会館の特徴だ。芸術家を含め、来館者の活動は、阿波和紙の普及や認知度の向上につながる。

 ー国内外の芸術家に創作活動の場を提供しているほか、近年は地元住民との交流事業にも力を入れている。

 開館前から、海外では和紙に興味を持つ芸術家が多く、伝統的な紙すきとは違う流れがあると思っていた。芸術家との触れ合いは刺激になるし、滞在期間中は徳島を知ってもらおうと住民も観光案内などに努めてくれる。海外の人と接することに不安がなくなってきたのではないか。

 ー今後の抱負は。

 多くの人に和紙会館を訪れてもらえればうれしい。阿波和紙の啓発や芸術家との交流など、これまでの活動を続けることで認知度の向上を図りたい。)