【特別賞】住友紀人さん
音楽の可能性を追求
小松島市出身の音楽家住友紀人さん(55)=東京都世田谷区=は、作曲家、サックス奏者、音楽指導者という三つの顔を持つ。米国のバークリー音楽院で学び、21歳で帰国して以降、国内外で30年以上活躍してきた。
多彩な活動で長年、徳島の音楽界に活気を与えたことが受賞につながった。「曲作りも音楽の指導も、自分にしかできない独自色を出してきた。聴く人、見る人の心を揺さぶる音楽を目指してきた取り組みが認められた」と笑顔を見せた。
那賀町西納の八面神社の農村舞台で、2012年からジャズライブを続けているほか、17年には徳島邦楽集団とのコラボ演奏も成功させた。
徳島の伝統文化とジャズを融合させる試みについて、住友さんは「音楽の可能性を追求する挑戦だった」と振り返り、「プロが持つ高い意識と技術を後進に伝え、刺激を与えられたら幸い」と語る。
18年に県内で開かれた近畿高文祭の総合閉会式にもゲスト出演した。「舞台に立つ自分の姿を高校生に見せることで、夢を与え、諦めずに活動していく勇気を感じ取ってもらいたかった」
母校の名西高校では定期演奏会を指導し、今年12月も演奏会に参加する。後輩に強調しているのは、地道な努力の大切さだ。そして苦言をステップアップにつなげること。「人は称賛よりも酷評によって成長する」を持論にしている。
俳優大杉漣さんとコンサートで共演したことも記憶に新しい。昨年、大杉さんが急死した際は、追悼ライブで冥福を祈った。
今後も徳島と世界をつなぐ懸け橋として飛び回るつもりだ。「自分ならではの音楽とは何か」。そんな問いに誠実に向き合っていくという。
すみとも・のりひと 1964年生まれ。映画「ホワイトアウト」(2000年)と「沈まぬ太陽」(09年)で、日本アカデミー優秀音楽賞を2度受賞。つるぎ高校の校歌や、県のマスコットキャラクター「すだちくん」のテーマソングの作曲も手掛けた。制作したテレビドラマや映画の音楽は2000曲を超える。