マダイは刺し身で食べるのが一番。身もうまいが、皮と皮下に味があるので皮目に湯をかけて「霜皮造り」にするのが一番好きだ
鳴門海峡など流れの強い海域にすむものにだけできるのが「鳴門骨」。中骨に枝のように伸びる血管棘(きょく)の一部が膨らんだもの

副産物の白子・真子も人気

 

 鳴門鯛をはじめ、ハモやアオリイカなど、豊富な水産物に恵まれた徳島県。海岸線は約400キロに及び、播磨灘、紀伊水道、太平洋という徳島に面する三つの海は、多種多様な魚介を育む海の幸の宝庫ともいえる。ぼうずコンニャクのペンネームで知られる、つるぎ町貞光出身の水産アドバイザー藤原昌高さん(59)=東京都=が、メジャーなブランド魚からマイナーな魚まで、徳島で取れる旬の魚介とお薦めの料理法を月1回の連載で紹介する。

 

 全国の水産物を見て回り、その特徴や歴史を調べている。なんとか47都道府県を回りきり、調べたことを整理していて気付いたのは、故郷である徳島県の水産物を知らな過ぎることだ。

 今、県内の魚介類と食べ物を調べ始めていて、てんやわんやの状況。その「徳島のさかな事始め」を、ここに書かせていただく。

 徳島県ということで、いの一番に浮かぶのがマダイである。天然ものも有名だし、養殖も盛んだ。

 漢字の「鯛」に当てはまる魚はとても多い。例えば分類学的に科が違い、俗に言う「あやかり鯛」(鯛にあやかって名付けられたキンメダイなど)を省き、タイ科の魚全てを挙げると13種。赤くなければ「鯛」ではないとしても、7種もいる。

 そのタイ科で最も一般的で、県内でも水揚げがあるのがマダイ、チダイ、キダイの3種。なかでも最も大きくなり、最も高価で、多くの人が単に「鯛」で思い浮かべるのがマダイである。亜熱帯域の琉球列島などを除き、日本全国で水揚げされている。旬は、産卵のために浅場に来る春。水温が下がる秋から冬にかけても、身に脂がのっておいしい。

 古代より、日本人のこの魚をめでる気持ちは強い。秋に捕れるものを「紅葉鯛」、冬の「寒鯛」、春の「桜鯛」、旬を外れた産卵後を「麦わら鯛」と、季節ごとの呼び名がある。

 産地を冠したものも多い。徳島県のある太平洋、紀伊水道、瀬戸内海で有名なのが和歌山県の「加太鯛」、兵庫県淡路島の沖合にある小島・沼島の「沼島鯛」、そして同県明石市の「明石鯛」などなど。なかでも徳島県の「鳴門鯛」ほど、古くから名をはせたものはない。北は鳴門市から、南は海陽町宍喰までの漁港、漁港で定置網やはえ縄、一本釣りでの水揚げがあることも忘れてはならない。

 特に、一本釣りものは「鳴門鯛」以外も、国内最高峰の味で超高級魚だ。大阪でも非常に人気が高い。刺し身の切り口と血合いの美しさ、身の甘さ、うま味の強さなど言葉にならぬほどだ。

 塩焼きや煮付けもうまい。「カルパッチョ」のほか、オリーブオイルや水、トマトなどと煮込む「アクアパッツァ」もたまらない。副産物の白子、真子も人気が高い。

 春にまとまって取れるので、時季には比較的手頃な値段で徳島県民の食卓に上るらしい。東京に住む身には実にうらやましい。

 ちなみに、ボクは生粋の徳島県人なので薄造りにして、塩をパラパラと振り、すだちをぎゅっと搾って食べるのが一番好きだ。これで近年、やたらにうまい県内の地酒をやる。思い出すたびに故郷に帰りたくなる、そんな味である。

 春には帰らねばいかんなー!。

 

 

 ぼうずコンニャク 本名・藤原昌高。1956年生まれ。ペンネームは、深海魚のボウズコンニャクにちなむ。幼いころにつるぎ町の貞光川で生き物と触れ合ったのがきっかけで水産物に興味を持ち、35年余りにわたって調べてきた。テレビ番組や書籍の監修を数多く手掛ける。著書は「すし図鑑」「美味しいマイナー魚介図鑑」「からだにおいしい魚の便利帳」など。ウェブサイト「ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑」主宰。