「サロン・デュ・ショコラ」にういろうなどを出品した和田乃屋のブース=2016年、フランス・パリ(ジェトロ徳島提供)

 昨今話題となる外国人旅行者による「爆買い」。家電製品を買い求めるイメージが強いが、実は菓子類の購入額は家電を上回る。爆買いが落ち着き、2018年の全品目の購入額が1兆5654億円と前年比で5%減った一方、菓子類は1761億円と前年比で10%増加。14年から2倍以上になっている。

 価格が手頃で品質の良い日本産菓子は、外国人旅行者による消費だけでなく、輸出も拡大している。18年の菓子類(米菓を除く)の輸出額は203億6400万円で、11年の88億4000万円から約2・3倍に増え、過去最高額となった。

 輸出先国・地域の内訳は、17年で香港(輸出額の30・6%)、韓国(14・4%)、台湾(11・9%)の順となっており、訪日外国人の多い国・地域で日本産菓子の輸出も盛んなことが分かる。

 販路を拡大していくには、現地マーケットやフェアでの販売、外国人旅行者の需要の取り込みなど、売り方の検討が重要だ。

 有楽製菓(東京)は、11年からチョコレート菓子などを台湾へ輸出し、13年に会員制交流サイト(SNS)などを通じて現地で爆発的にヒット。一時は生産した商品の6割が台湾への輸出用になったという。現在も同地への拡販を進めるとともに、羽田や関空、新千歳といった国内の国際空港でも販売を行っており、外国人旅行者向け、輸出の双方で海外需要の取り込みを図っている。

 徳島県では、市岡製菓(小松島市)が、蒸しケーキなど半生菓子を香港や東南アジアなどへ輸出する一方、競合企業の少ないベトナムに15年に現地法人を設立。18年に現地工場で生産を始めた。現地のコンビニや百貨店でどら焼きなどを販売している。ベトナムからタイやシンガポールといった近隣国への輸出も計画し、「メード・バイ・ジャパン」の高品質・低価格商品の販路開拓も進めている。

 和田乃屋(徳島市)は、フランス・パリで開かれている世界最大のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」に16、17年、カカオを練り込んだういろうや焼き餅を出品。好評だったという。

 輸出の障壁となるのは、賞味期限や原材料の規制、食のトレンドへの対応だ。

 継続的に輸出するためには、近隣国でも冷凍で1年以上の鮮度保持を求められることが多い。原材料では、着色料として日本で広く用いられるクチナシ色素やベニバナ色素などの添加物が、香港、台湾、タイ、欧州連合(EU)、米国などで一部または全て禁止されており、輸出先ごとの仕様変更が必要となる。トレンド上の対応として、欧米のバイヤーが砂糖や小麦タンパクのグルテンを使わないよう求めてくるケースもある。(佐川将平・ジェトロ徳島)