「なると金時」をはじめ、徳島県産のサツマイモはその味や色合いの良さ、栄養価の高さなどから海外でも人気が高い。
日本のサツマイモ輸出は、2017年に約2600トン、約9億7千万円と量、金額ともに過去最高となった。14年の輸出額は約3億8千万円で、3年で約2・6倍に増加した。輸出先は中華圏や東南アジアが中心で、輸出量の割合は香港(約60%)、シンガポール(約12%)、台湾(約12%)の順に多い。
徳島県産を見ても、県によると、香港や台湾、シンガポールを中心に、17年度は151・6トンを輸出。14年度の89・6トンから約1・7倍に伸びている。
サツマイモは中華圏ではポピュラーな食材であり、大学芋に似た「抜絲地瓜(バースーディーグワ)」と呼ばれるものやスープ、おかゆ、サツマイモの葉の炒め物などレシピも豊富だ。しっかりとした味付けの調理法が多いのが特徴だが、近年は健康意識の高まりから、日本産は何も付けなくても甘みが強くヘルシーだと需要が高まっている。
輸出の増加に伴い、日本の産地間の競争が激化している。各国のスーパーマーケットでは徳島県産のほか、鹿児島や宮崎、茨城、千葉といった主要産地のサツマイモが販売されており、各地で販路拡大に向けた独自の取り組みが始まっている。
徳島県では、東南アジア向けのなると金時の輸出において、研究機関や輸送事業者などが連携し、温度や湿度の環境を制御できるコンテナを用いた品質保持試験を実施。より低コストで、高品質のサツマイモを届けるための物流システムの構築を目指している。
一方、宮崎県は、日本では需要の低い小ぶりのサツマイモを、現地での販売価格を抑えられる利点があるとして輸出している。女性や子どもも食べやすく、電子レンジや炊飯器で簡単に蒸すことができると、香港などの主婦層に人気だという。
千葉県ではマレーシアの現地スーパーに焼き芋機を設置。蒸し芋が一般的という同国で、焼き芋という新しい食文化を提案した。
好調な輸出の裏には激しい産地間競争を勝ち抜くための戦略が求められている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ジェトロ徳島で輸出支援を手掛ける佐川将平氏に、県産品の輸出事例や海外に売り込むポイントなどを品目ごとに月1回、紹介してもらいます。
佐川 将平(さがわ・しょうへい)千葉大園芸学部卒。2014年、日本貿易振興機構(ジェトロ)に入り、農林水産・食品部で海外市場の調査、個別企業支援に従事。16年からジェトロ徳島。26歳。神奈川県出身。