写真を拡大  ジャワティストレート レッドの歴代ボトル

 大塚グループの大塚食品(大阪市)の看板商品の一つ「シンビーノ ジャワティストレート レッド」が5月で発売30周年を迎えた。国内では現在、消費者の健康意識の高まりを受けてさまざまな無糖飲料が販売されているが、1989年のジャワティ発売当時はまだ一般的でなく、無糖紅茶の商品化は初めてだった。国民に新たなライフスタイルを提案した画期的な商品が誕生した影には、「ボンカレー」や「ポカリスエット」を生み出したアイデア社長のひらめきと、開発や販売を担当した社員の努力があった。(写真はいずれも大塚食品広報室提供)

 ■シンビーノブランドの誕生

 ジャワティはシンビーノというブランド名を冠している。40代以上の読者ならこの名前になじみのある方も多いだろうが、シンビーノシリーズは1989年5月24日のジャワティ発売以前から存在していたのだ。

写真を拡大 シンビーノ アップル

 大塚食品広報室によると、シンビーノはスペイン語で「~でない」を意味する「sin(シン)」と、ワインを意味する「vino(ビーノ)」を組み合わせた造語で、ノンアルコール飲料を意味しているという。

 シンビーノが発売された80年代初頭、高度成長や石油ショック、世界不況という大きな時代の転換点を経て国民の価値観は変化し「本当の豊かさとは何か」「どう生きるべきか」などとライフスタイルを見直す機運が高まっていた。

写真を拡大 1989年版のジャワティストレート レッド

 自分のライフスタイルに合ったものに価値を見いだし、物と心のバランスがとれた真に豊かな生活の実現を目指す人が増える中、全く新しい商品コンセプトとライフスタイルを提案するために開発されたのがシンビーノシリーズだった。

 開発担当者は、コミュニケーションと飲料、食事と飲料の役割を徹底検証し、主に若者に対して新しいシティー感覚のライフスタイルを提案する飲料として、82年にアルコールを含まないノンアルコールタイプの「シンビーノ アップル」を誕生させた。

写真を拡大 1998年版のジャワティストレート レッド

 シンビーノ アップルは甘味を抑えたリンゴ味の炭酸飲料で、既存の清涼飲料にない個性的な味わい。容器はワインボトルのような緑色のガラス瓶に、赤、青、白を基調として英語が書かれたラベルが貼られた都会的デザインだった。

 シンビーノシリーズにはその後、ローズヒップ、グァナバナ、マンゴーが追加された。いずれも他メーカーではあまり見られない独特の味わいで、根強いファンも多かったものの、残念ながら99年までに全商品が販売終了となっている。

 ■ジャワティストレートの誕生

 新たなライフスタイルを提案し、若者らから一定の支持を得たシンビーノシリーズだったが、誕生から数年後には「甘くて食事に合わない」という意見も多く寄せられていた。このため開発担当者は新たに、無糖のどんな食事にも合う商品の検討を進めていた。

 そんなさなか、当時の大塚製薬と大塚食品の社長だった故大塚明彦前大塚ホールディングス会長が、米国の企業の研究所竣工(しゅんこう)式に招かれた。食事会のメニューはフランス料理で、どんなワインが出るか楽しみにしていた大塚社長だったが、運ばれてきたのは水と無糖のアイスティーだった。

写真を拡大  2003年版のジャワティストレート レッド

 工場の労働協約でアルコールが禁止されていたためだが、このアイスティーが料理とよく合った。竣工式の帰路、大塚社長が昼時のレストランを見ると、ウエーターがアイスティーをピッチャーに入れてサーブしており、水のように親しまれているのが分かった。

 日本初の市販レトルト食品であるボンカレーやポカリスエット、カロリーメイトといった画期的商品をはじめ、シンビーノシリーズの企画・開発にも携わったアイデアマンの大塚社長。帰国後すぐにシンビーノシリーズの新アイテムとして、食事に合うアイスティーの研究を始めた。

写真を拡大  2009年版のジャワティストレート レッド(左)とグリーン

 原料となる茶葉は、世界中のさまざまな品種の中からインドネシア・ジャワ島産の手摘み茶葉を100%使うことにした。インドネシアにある海外事業会社の現地役員から紹介されたものだったが、ストレートティーにぴったりのキレのあるすっきりとした味わいが決め手となった。

 ここからさらに抽出方法の試行錯誤が重ねられた結果、キレのあるすっきりとした味わいと茶葉本来の香りを引き出しながら、紅茶特有の渋みを和らげ、アイスティー特有の濁りを砂糖を使わずに抑えた鮮やかな琥珀(こはく)色の水色(すいしょく)を実現することに成功した。

写真を拡大  2012年版のジャワティストレート レッド(左)とホワイト

 こうして無糖、無香料、無着色でストレートタイプの日本初の紅茶飲料シンビーノ ジャワティストレート レッドが誕生。食事時に飲む飲料は無糖のウーロン茶などしかなかった当時、本木雅弘さんをCMに起用するなどして「コーラもウーロン茶もワインもいいけど、一度試してみたら」というキャッチフレーズで発売された。

 ■二本箸作戦

 店頭販売の一方で、食事に合わせて無糖アイスティーを飲む習慣を定着させる必要があったため、営業担当者は「二本箸作戦」と称して飲食店を日夜訪問。試飲やサンプリングを重ねてもらうことで、主役のどんな料理も邪魔せずに引き立てる食中飲料としてのジャワティの認知度を徐々に高めていった。

写真を拡大  2019年版のジャワティストレート レッド30周年記念限定パッケージ

 こうした地道な努力を積み重ねた結果、食事に合わせた飲料や、酒食の場でアルコールが飲めない人の代用飲料としてジャワティストレート レッドを飲む習慣が定着。「新たなライフスタイルを提案する」という所期の目標を実現するとともに、その後に登場する幾多の無糖飲料の先駆けにもなった。

 発売当初から一貫して無糖、無香料、無着色というコンセプトを守り、味をほとんど変えずに愛され続けているジャワティストレート レッド。6月からは30周年を記念した限定デザインのボトルで販売されている。日本の無糖飲料に新たな歴史を刻んだ画期的商品の歩みに思いを巡らせながら味わってみてはいかがだろうか。