「プチ遭難をしてしまいました」と、山歩きを始めて2年になる高橋ふとん店(松茂町)の高橋武良社長(52)。さらりと言うものの、その体験は捜索騒ぎの一歩手前となる危ういものだった。ちょうど昨年の今頃の出来事という

 現場は鳴門市の天円山。標高434メートルの里山で、片道約2キロの登山道はさほど険しくない。難なく頂上に着いた高橋さんは、別ルートで帰りを試みる。これが裏目に。道を誤って引き返すもまた迷い、揚げ句に斜面で滑り足首をひねった。登ると痛みが増すため、足はおのずと下へ

 草深い沢では携帯電話はつながらず、地図アプリも反応しない。不安に襲われながら川の中を歩いていると、脇に工事現場跡を見つけた。助かると信じて草をかき分け、どれくらい進んだか。ようやく視界が開けた

 県内の山岳遭難はここ数年県警が認知しただけでも年10件台で推移し、8年続けて死者も出ている。千メートル未満の低い山での遭難は珍しくなく、昨年の4件は全体の3分の1だ。剣山級でなくても侮ってはいけない

 高橋さんが教訓談としてフェイスブックに投稿すると、助言コメントも届いた。山で迷ったら、とにかく尾根を目指すのが鉄則らしい

 緑の濃淡が陽光を浴びてまぶしい夏山の季節。「小さい山も甘く見ません」と高橋さん。今年も鳴門の山々を歩いている。