玄関先でくつろぐ吉本さん家族。育児や家事を夫婦で協力し合っている=阿南市内

長女(左)、次女(中)と過ごす藤澤さん。1年半を一緒に過ごした長女は大のパパっ子だという=美馬市内

 「育児休業は女性が取るもの」。多くの職場ではそんな暗黙の了解がないだろうか。今や共働き世帯の数は、専業主婦世帯の2倍を超える。職場での「女性活躍」を進めるなら家庭での「男性活躍」も不可欠だ。最近では男性の育休取得を推進する動きも企業に広がり始め、5日には取得の「義務化」を目指す自民党の議員連盟が設立された。男性が子育てのため、堂々と仕事を休める社会は実現するのか。

 障害者支援施設「希望の郷」(徳島市)に勤める吉本直紀さん(35)=阿南市=は4年前、第2子となる長女が生まれてから2カ月半の育休を取得した。中学校教員の妻真菜実さん(35)から「休んでほしい」と頼まれたのがきっかけだった。真奈実さんも育休を取ったが、当時3歳になる長男もいたためだ。

 職場で男性の育休の前例はなかった。休んだ場合に仕事をカバーしてもらうことになる同僚に相談すると「取りな、取りな」と背中を押された。遠慮がちに管理職に尋ねてみると、すんなり受け入れられた。

 育休中は、主に長男の育児を1人で担った。列車を一緒に見に行くなど楽しみ、子どもがいると家事が滞る実情を知った。

 真菜実さんは「育児と家事の大変さを分かってもらえたので、安心して自分の気持ちを言えるようになった」と話す。職場では吉本さんに続き、3人の男性が1カ月程度の育休を取った。

 中学校教員の藤澤一平さん(32)=美馬市=は第1子の長女が8カ月の時から1年3カ月間、育休を取得した。育休を取っていた小学校教員の妻ちひろさん(32)が、仕事に復帰する必要に迫られたためだ。

 離乳食を作っても食べてくれない挫折感を味わったものの、歩き始める瞬間に立ち会えるなど、「苦労より楽しさが勝った」と振り返る。4歳になった長女は大のパパっ子になった。腕枕で寝かし付けていたため、今も腕にくっついてくる。

「人手不足」「職場の雰囲気理由」

 男性の育休取得者は少ない。厚生労働省の2018年度雇用均等基本調査では、対象者に占める取得者の割合は女性は82%に上るが、男性は6%にとどまる。

 取得できたとしても期間は短い。15年度雇用均等基本調査によると、57%は5日未満、83%は1カ月未満だった。

 ただ、短期の育休でも「メリットはある」とする見方はある。子育て支援ネットワークとくしまの松﨑美穂子理事長は「ひとときでも、夫婦で話し合いながら乳児と向き合うことで、育児を巡って起きるすれ違いを防げるはずだ」と話す。

 なぜ、取得者が増えないのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが17年度、男性約2千人を対象に実施した調査では、育休を取得しなかった理由として、「人手不足」「取得しづらい雰囲気」を挙げる人が合わせて5割を超えた。

 こうした状況もあり、一部の企業ではワークライフバランスの実現に取り組み、男性社員の育休取得を推進している。

 西精工(本社・徳島市)では09年以降、6人が最長13日間の育休を取った。会社の呼び掛けで最初は営業職から始まり、1人でも現場を離れると影響が大きい工場にも取得の動きを広げた。

 工具の制作に携わる川端悠寛さん(28)は昨年、土成工場勤務の男性で初となる育休を3日間取った。土日と合わせて5日間を育児に当てた。

 自身も小学生2人の父である上司の宇原大樹さん(42)は「子育て中の社員も多く、保育園からの急な呼び出しもある。普段からカバーし合える体制づくりを目指している」と話す。

 積水ハウス(本社・大阪市)は、18年9月から、3歳未満の子どもを持つ男性社員に1カ月以上の育休を取得するよう促している。19年4月末時点で取得対象者1453人のうち、取得済みあるいは取得中の人は857人。6割程の人は4分割して取得し、1割程が1カ月連続で休んでいるという。

 同社広報部は「業務の整理や見直しの機会となっているほか、互いを支え合う風土づくりにもつながっている」と企業側にもメリットがあるとする。

自民議連、義務化を視野

 少子化対策としても重要視されている。フランスでは、男性は計2週間の出産休暇と父親休暇を取るのが一般的で、「父親」になるための期間と位置づけられている。先進国の中で比較的高い合計特殊出生率を支える一因になっているとみられる。

 男性の育休取得を企業に義務付けることを目指す自民党の議連(会長・松野博一元文部科学相)は、女性活躍や少子化対策につなげる狙いで設立された。今後、法制化も視野に議論を進める考えだ。

 議連の動きについて、徳島文理大の齋藤敦教授(経営学)は「先行き不透明な中、企業は人件費を抑制している。一人一人の仕事量が増え、休みが取りにくい状況になっている」と指摘。その上で「人手を増やすための施策も議連の中で議論されるよう、有権者はウォッチする必要がある」と話す。

 連合徳島の森本佳広会長は「労働者の約7割が働く中小企業に、どう浸透させるかが課題」とする。企業側も意識を変え「育児、介護などは性別関係なく行うものと想定しておくべきだ」と強調した。

編集後記

 20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が28、29両日、大阪で開かれる。それに先立ち、5月末に徳島市内でW20のワークショップがあった。W20とは、女性の視点でG20の加盟国・地域に政策提言する国際的な民間組織。日本支部の事務局長らが来県し、ジェンダー平等を実現する方策を参加者と議論した。

 「男性の育休」もトピックの一つだった。「妻が3カ月取るなら、夫も3カ月取るのが理想」(男性公務員)、「男性スタッフも育休が取れる職場にしたい」(男性経営者)などの意見が聞かれた。

 一方で、ツイッターに「夫が育休明けに急な転勤を命じられて退職した」と、化学メーカーのカネカに勤める男性の妻が投稿して波紋を広げていた。会社側は「育休が理由ではない」などと釈明に追われている。

 社会の価値観は確実に変わっている。稼ぎ手は男性、家庭を守るのは女性という役割分業を前提にした日本の雇用慣行は、もはや時代に合わない。