地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画で、候補地の一つの陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)を「適地」としていた防衛省の調査に誤りがあることが判明した。

 地元住民が安全や健康への影響に不安を募らせている中での、信じ難い不手際である。秋田県知事が「議論は振り出しに戻った」と突っぱねたのは当然だろう。

 調査結果の信用性が根底から崩れた以上、防衛省は計画を白紙撤回すべきだ。

 調査は「ほかに適地はないのか」という新屋演習場の地元住民の要望に応えたもので、防衛省が東北3県の19カ所を対象に行った。その結果、同演習場以外は全て配備に適さないと結論づけた。

 このうち9カ所は周辺の山が高く、レーダーの電波が遮られるという理由で不適となったが、山を見上げる「仰角」の数値が実際より過大に測定されていた。

 仰角の数値計算には、衛星写真を利用したデジタル地図「グーグルアース」を使っている。その際、計算に用いた「高さ」や「距離」のデータが、グーグルアースではそれぞれ縮尺が異なっていることに気付かなかったという。

 お粗末なミスと言うほかない。何より、国の安全保障に関わる計画だというのに、現地に出向いてないというのは理解に苦しむ。

 机上で算出した数値を現地の状況と見比べていれば、誤りに気付くことができたのではないか。基本的な作業すらしていないとあっては、住民に「新屋演習場ありきだ」と批判されても仕方あるまい。

 誤りを発見したのは地元紙だった。データを疑って独自に計算した上で、測量業者に依頼してミスを確認した。報道がなければ、不正確なデータを根拠に迎撃ミサイルが配備されていたかもしれない。

 新屋演習場の周辺は住宅密集地で学校もある。配備計画を巡っては、住民は攻撃目標になりやすいとの懸念や、レーダー波による健康被害の心配を強く訴えてきた。

 防衛省は「万全の警備体制を敷く」「レーダー波は人体に影響がなく安全」と理解を求めていたが、これらの信ぴょう性も疑わしくなったと言わざるを得ない。

 防衛省は、新屋演習場が適地との判断を見直す考えがないと強調するが、住民の理解を得るのは至難の業だろう。

 追い打ちをかけたのが、秋田市であった住民説明会での防衛省職員の居眠りである。失態にはあきれるばかりだ。

 岩屋毅防衛相はきょう秋田県を訪問し、知事や市長に面会する予定だが、いまさら謝罪したところで信頼回復は難しいのではないか。

 ミス発覚後、防衛省がもう一つの候補地としている山口県阿武町で開いた住民説明会でも、配備反対の声はますます強まっていた。

 もはや、このまま計画を進めるには無理がある。一からの練り直しが必要だ。